「季節のお酒」と「いつもの味」

雑学

居酒屋や酒屋さんに行くと、「しぼりたて」「夏酒」「ひやおろし」など、季節ごとの限定日本酒をよく見かけませんか?
「ビールやワインにも季節ものはあるけど、日本酒は特に多いなぁ」そう思った人はめちゃ鋭い!

実は、日本酒に季節限定が多いのには、日本酒ならではの「製造サイクル」が深く関係しています。そして逆に、一年中味が変わらない「定番酒」には、職人たちの驚くべき技術が隠されていたのです。
今回は、知るとお酒選びがもっと楽しくなる「日本酒の季節と味の秘密」をご紹介します。

日本酒は「冬に生まれて秋に大人になる」

日本酒造りの本番は、お米が収穫された後の寒い「冬」です。 ワインなどは収穫年(ヴィンテージ)で管理されますが、日本酒は「1年という時間の中で、熟成度合い(成長)を楽しむ」お酒と言えます。冬に生まれたお酒が、季節を追うごとにどう変化していくのか見てみましょう。

❄️ 冬:生まれたての「新酒」

しぼりたて、新酒
搾ったばかりの赤ちゃんのような状態。荒々しくもフレッシュで、フルーティーな香りが特徴です。中には発酵のガスが残るピチピチとしたお酒もあり、鮮度そのものを楽しみます。

🌸 春:演出を楽しむ「春酒」

花見酒、うすにごり
冬に搾ったお酒が出荷される時期。お花見シーズンに合わせて、桜色のラベルや、少し白く濁らせた「霞酒」が多く登場します。春の山菜や貝類が持つ「苦味」に合う、爽やかな味わいが多いです。

🌻 夏:暑さに勝つ「夏酒」

生酒、夏酒
本来、日本酒は夏が苦手。でも、冷蔵技術の進化で「夏でも美味しいお酒」が造れるように!キンキンに冷やした「生酒」や、酸味を効かせたドライなタイプなど、そうめんや冷奴と合わせて涼むための工夫が凝らされています。

🍁 秋:旨味の完成形「ひやおろし」

ひやおろし、秋あがり
実はここが一番美味しい季節! 冬に造ったお酒を、涼しい蔵の中でひと夏じっくり寝かせることで、トゲトゲしさが消え、まろやかで濃い旨味へと成長します。サンマやキノコなど、秋の味覚に負けない「コク」があります。ぬる燗にしても最高です。

「いつもの定番酒」が同じ味なのはなぜ?

ここで一つの疑問が浮かびます。時間が経つと味が変わるなら、スーパーで売っている『いつものお酒』はなぜ一年中同じ味がするの?

実はこれ、蔵元によるものすごい企業努力と技術の結晶なんです。
自然に任せると変わってしまう味を「いつもの味」にするために、主に3つの魔法を使っています。

  • 職人によるブレンド(合組)
    タンクごとに微妙に違う味や、熟成具合の違うお酒をパズルのように組み合わせ、「いつもの味」に着地させています。
  • 火入れ(加熱殺菌)で成長を止める
    加熱することで酵素の働きを止め、味が勝手に変わらないように「時を止めて」います。
  • 冷蔵技術で鮮度キープ
    マイナス温度の倉庫などで保管し、出荷の直前までフレッシュさを維持しています。


つまり

季節限定酒 = お酒の自然な成長(ライブ感)を楽しむ
定番酒 = プロが調整した変わらない安心感(完成された作品)を楽しむ
という違いがあるのです。


まとめ:日本酒で四季を感じよう

日本酒は、ただ酔うためのお酒ではなく、「今の季節」を舌で感じるためのツールでもあります。

春は苦味を 夏は酸味を 秋は旨味を 冬は鮮度を

そして、迷ったときは職人技が光る「いつもの定番酒」を。
この仕組みを知っていると、酒屋さんや居酒屋のメニューを見る目が少し変わりませんか?

今夜はぜひ、今の季節にぴったりの一本を選んでみてくださいね。